料理研究家で構成する会社がレシピと写真撮影をワンストップで制作する「使い勝手のいい小さなスタジオ」として設立以来、順当に受注を増やしてきたフードクリエイティブファクトリー(以下FCF)でしたが、外部環境の目覚ましい変化によりワンストップ制作のオーダーが激減していました。
代表の五十嵐が当時を振り返ります。
「FCFがアクセルを踏み込めたのはレシピというニッチな分野で、わかりやすく制作会社より安くやることだったんですね。レシピを料理研究家の先生に頼んで、スタイリストを別の先生に頼んで、カメラマンを手配する煩わしいディレクターの作業を一貫することで簡素化できるようにしたんです。一般の制作会社より小さいので安くやれる、というわかりやすいモチベーションの提供で問い合わせは高い頻度でいただいていました。」
 

競合他社との差別化に苦しみ、売上伸び悩む

ーそこでピンチが起きた、と?
「そうです。大きな時代の変化はインターネットで簡単にブログ経由で仕事ができるようになったこととコンシューマー向けデジタル一眼レフカメラの技術でした。これまでは本を出したり、テレビや雑誌に取り上げられてれば仕事の依頼がどんどん増えていたんです。クライアントの事情としてもあまり失敗したくないから、友人や同僚づての口コミを辿ってくれたり。でもインターネットで誰でも調べて、写真の上手なブロガーさんに依頼するとか、そう行った商習慣ができ始めたんですよね。またFCFと同じ事業モデルを始める競合他社も増えてきました。マーケットが分散したこともあり、売り上げは横ばいでしたね」
「当時は経営のロジックもなくて、感覚的にただ人を増やしていました。お金があるから人を増やしてもっと伸ばそう、みたいな。笑 これまでただ頑張ってれば伸びてたので、この感覚でいけたんですけど、伸びにくくなった時に困りました。あれ、未経験のフードコーディネーター志望のスタッフ採用しちゃったけど、仕事作らないと、という感覚ですね。」
 

食のキュレーションメディアに活路

伸び悩む中で、スタッフを採用してしまうというのは転落への近道ですが、明るくてチャレンジには前向きの五十嵐が当時にわかに話題になっていた「キュレーションメディア」をやりたいと言い出します。
「Facebookを見てて、ちょっとした隙間時間に読んで楽しい記事の構成が楽しかったんですよね。仕事ができる人が人知れずやっている7つの習慣、みたいな企画です。ボリューム感も程よくて、ユーザーも持ち帰りやすい。食の分野で面白いキュレーション企画がないぞと思ったんです。だからやってみようと。」
 
ー初めは何から手をつけたのですか?
「LIGさんのLIGブログがすごく面白くて、LIGのメンバーの方に会いにいきましたね。友人の繋がりもあって、所属する勉強会で社長に登壇していただいたりで懇意にしていたランサーズさんのイベントがありました。そこにLIGのメンバーがLIGブログの作り方を話すという機会をランサーズに務める友人の投稿を介して知ったのです。すぐ行きました。伸さんというLIGブログの仕掛け人とも言える方と出会い、LIGのカードゲームイベントに参加したり、FCFの究極のたこ焼き職人が作るたこ焼きパーティに遊びにいらしていただいたりして。伸さんにLIGブログのような食のキュレーションを始めたい、初めはサイトの設計をLIGさんを参考にしたく仕様がかぶることがあると思いますが、運営しながら独自の形を目指していきたいと思うのですと伝えて、そしたら背中を押すような言葉をいただけて、それでサイト作りをスタートしました」
「サイト作りに関してはぱくたその管理人の寿司朴さんにSEOのアドバイスをいただき、ヴォラーレ(現ナイル)のSEOセミナーにも参加して、当時はサイトもHTMLのビルダーアプリで自作していたので、初めてPHPとSQLを使えるエンジニアさんとランサーズ経由で調べて、とにかくよく学びました。」
 

サイトオープン!しかし先客が…

ーそれでサイトがオープンしたわけですね。
「構想から3ヶ月で突貫工事の末、LIGブログ劣化版みたいなサイトがオープンしましたw当時はデザイナーがいなかったので仕方ないです。デザインは大事。笑 運用するためには人が記事を書く必要があったり、そのリソースを予定に入れてなかったんですけど。笑 めちゃくちゃやりながらサイトを運営して1〜2ヶ月経ったあたりで衝撃の事件が起きたんです。」
「僕がやりたかった感じのキュレーションメディアらしいものがあったんですよ。調べたらぐるなびさんが運営していることがわかりました。すぐにぐるなびに務める友人に電話して、担当者に会いたいとリクエストしたらすぐに繋いでいただきました。担当者と顔合わせしたら”お久しぶりです”と言われたので、え〜と思ったら、前職で一度だけグループインタビューで顔合わせしたことがある方だったんです。それで、僕がやろうとしていたキュレーションメディアの構想を話して、近い感じでやられているサイトを見つけて会いに来たこと、こうやったらもっとウケると思うという意見を伝えたところ、うちで書きませんか?というオファーをいただいたのです」
「僕が持っていった企画はとにかく尖ってました。これまでのメディアのトンマナを軽く無視して、これが面白いと思う。ウケると思う。この一点張りでした。実績もないのに。笑 当時はまだメディアはファンも付いていなくて、ひっそりやっていたそうなのですが、一発目からホームランだったのです。」
 
ーどんな企画だったのですか?

「”虫料理研究家だけど、デートで使える虫料理の店を紹介するよ”です。当時はてなブックマークが0-1くらいだったのですが、はてなブックマークが即日で25付いて、みんなのごはんで初のホットエントリに取り上げられて、喜んでいただけました。」
 
「おー数字の感覚はよくわかんないけどウケたんだ〜よかった、と思って。次の企画は”【中毒性注意】TKGに組み合わせてはいけない禁断の廃人飯レシピまとめ5選”です。」
 
ーそれはどれくらいの結果を出したのですか?

「800近いはてなブックマークがつきました。数十万のPVが流入し、担当者の方々もとても興奮気味に喜んでいただき、僕も嬉しかったです。この【中毒性注意】廃人飯のシリーズは。他にもエンジニア向けに料理を理屈っぽく解釈する”料理の科学”。原則ネットを回遊する時間が長いユーザー向けに企画するようにしていました。」
「感覚を掴んでくると、これはウケるな、とかこう切り口を変えた方が刺さりそう、という感覚がわかるようになってきました。企画、打ち合わせは他のスタッフができるようにしていき、企画、執筆にかかるリソースをさらに改善していくなど取り組みを続けていきました。記事を見て仕事を依頼したいと言われることが増えてきて、記事コンテンツ制作に活路が見えたと同時に、事業の課題も同時に改善されていました。ほら、以前はマス媒体に出れば問い合わせ増えたんです。でも今わかっているのはWEBで認知された方が問い合わせは増えますね。その辺りの気づきは大きかったです。」
 

依頼が増えて別の問題も!

ー依頼が増えて問題もあったとお聞きしましたが、どんなことがあったのですか?
「企画ってある程度までは考えてて楽しいんですが、業務が押してくると悪化するんです。企画は軽い気持ちで楽しくリラックスしてる時が一番楽しいし、軽やかにアイデアが出ます。仕事が詰まってくると、納品したら次の企画作らなきゃ、浮かばない、クソーーー!!!みたいな。心が健康な状態じゃないとやり甲斐がなくなってしまうデリケートな性質を持つんですよね。担当してたスタッフが「消耗する」と言ってました。」
 
ー人間がやる仕事ですもんね。
「そうです。そのために企画を誰でも作れるようになるためのレクチャーや公式は工夫しましたね。あとはレシピよりも作業工程が不確実性が強いから、時間管理しづらい。FCFは9時-18時までの業務時間では結構これ大変でした。気づいたら利益出てないどころか赤字の案件もあったくらい。奥が深くて、今も継続的な改善をしていますが、会社とスタッフ間の信頼関係と意図の共有がなければ継続した改善はできないです。もう6年近く経ちますが、今はすごくいい環境で仕事させていただいてますね。継続手に改善して高めていけるチームになりました。」
「利益の出ない仕事は断るというのも大事なことに気がつきました。会社だと時間あたりのコストがどうしてもかかるので、新しい仕事には工数計算して改善をある程度尽くしても利益が出ないならやらない方がいいという判断がつきました。職場の環境を保つ上ですごく大切な気づきになったと思います。」
「SNSやWEBでファンを作りたい企業向けと、採用コンバーションを高めたい企業向けに動画制作のサービスが今すごく需要があるので、こちらを起点にしているのですがSNSでウケる記事コンテンツのノウハウと実績を得たことで、この分野で優位性を築けているのは大きいです。企画や制作も外注に全て出すというチャレンジをしたことがありますが、外注だとクリエイティブが成長しない。内製ならフィードバックして改善できます。だから今も強みの部分は内製にこだわっています。」
 
ーSNS拡散数40万以上というのはどんな道のりだったのでしょうか。
「みんなのごはんのメディアだけで 38万のソーシャルリンクを獲得していますね。ヒットしそうな企画づくりをひたすら続けていました。一人のスタッフを専業に配置していたのですが、もう企画が生まれなくなってしまって、僕や役員の五十嵐ゆかりも一緒に考えて、そうしてたら僕らが8割考えるのがデフォになってしまった時期があったり、という手を貸すとこうなってしまうのね〜とマネジメントの難しさを感じたりしながら、続けてるとメディアが成長するんですね。メディアにファンがつくと拡散量が単純に増えます。そうなればほとんどボーナスステージで、大抵拡散されるようになってました。笑 もちろんその中でよりホームランかっとばすにはどういう企画がウケるかを考え続けるんですけどね」
「僕は自分の仕事がルーティンにならないので、ほとんど新しいことに手をつけるチャレンジが仕事なのです。だから担当者を作らないと継続しないことがわかってきました。本当、今回うまくいったのは担当者をつけたことですね。普通の企業だと当たり前かもしれませんが、担当を決めてルーチン化するとちゃんと当たりますね。今FCFでも糖質制限つくりおきのメディア作りをしていますが、遅かれ早かれ担当を決めて続けていれば大きくなっていく感覚はあります。無理せず続けることを意識的に心がけています。」
 
代表の五十嵐にインタビューしていると話は尽きませんが、それだけ一つ一つの仕事におけるチャレンジと、トライアンドエラーに情熱を持って取り組んでいるからこそ問題が起きた時もなんとかして乗り越えるスタンスが強いなと感じます。
記事コンテンツ制作もやはり競合他社との外部環境の変化により、現在は動画制作を成長事業に移し、企業のファンづくりのために、ブランドサイトの企画制作と動画制作、記事コンテンツ制作をトータルで提供し、SNS広告で認知流入を提供しています。
何もないところから有を生み出す行動の源泉は、サービスに対して情熱あふれる人の存在だったのではないかと思います。
 
これからもFCFのプロジェクトストーリーを続けていきますので引き続きお読み頂ければ幸いです。

この記事を書いたのは…

五十嵐 豪

フードクリエイティブファクトリー代表取締役/しかない料理研究家/ヘンタイ祭り実行委員責任者 21歳大学生で所持金4万円、未経験から料理研究家に。農水省、経産省、サントリー、味の素など行政/大手企業のキャラクターやレシピ開発を担当。TVでは日テレOha4、BSの番組でレギュラーコーナーをもち、Jcom男子料理道場のMC兼プロデューサーを担当。FCFではコンテンツマーケティング戦略を得意とし、人材採用・プロモーションの分野で高いROIでターゲットを獲得する実績をもつ。和食会席大手の北大路の採用獲得コスト75%減などプロジェクトでは高い結果を得ている。日本武道館で5000人を前に「ヘンタイであれ」とスピーチしたことがある。